■ 袴について

ただでさえ少ない男性の和服姿ですが、袴を着けた男性となるとよほどのことがない限り、お目にかかることはありません。ごく一般的には、男性が袴をつけるのは結婚式の新郎や茶会くらいでしょうか。礼装用に用いること以外にも、本来袴の持つ機能性に注目すべきです。袴は、活動的なスタイルになることや、下に着る着物の保護や保温などの目的もあるはずなのですが、現在ではこうした目的で袴を用いることはほとんどなくなってしまいました。




しかしながら、男性の袴姿というのは実に格好の良いもので、個人的には非常に完成されたデザインだとも思います。袴は最初四枚の布を繋ぎ合わせて作ったものが色々なデザイン変化を経て、現在の形になったものですが、つくづく日本人ってすごいなあと思ってしまいます。袴をつけるとデザイン面だけでなく、気分的にも風格が増したような気になります。事実、背中に腰板がぴったりと沿っているのを感じると気持ちのいいもので、自然と姿勢もよくなりますから不思議です。



■ 一般的な袴の形状


現在一般的な袴には、中が二股に分かれている馬乗り袴(うまのりばかま)と完全に筒状の行灯袴(あんどんばかま)がありますが、格好がいいのは断然馬乗りです。正面向いてじっとしていれば、ぱっと見は区別がつきませんが、立ったり座ったり歩いたりすると一目瞭然です。また、実際には馬乗りの方が裾裁きもよく、歩きやすいです。とはいえ、いくらカッコ良くてもこうした袴はやはり外出時やフォーマルな場でつけるもので、日常生活ではあまりつけません。日常着の袴はあとで説明する野袴系のものがお薦めです。

馬乗り袴 行灯袴


袴地は、「仙台平」が代表であり最も格が高いとされます。正式には「精好仙台平」といいますが、本物の仙台平は現在後継者も少なく、わずかしか織られていなくて、現在の袴の生産量の90%は「米沢平」と呼ばれるもので、その名の通り山形県の米沢が代表産地となっています。その他、袴地にはお召、紬、ウールなどのものもあり、一般的にはお召や紬の袴が最も合わせやすいと思います。なお、グレーや茶系の仙台平の縞の袴は、羽二重の紋服やお召しなどに合わせるのが普通で、紬やウールの着物には不似合いです。また、縞の太さもさまざまですが、年齢に関係なく細めの縞を選んだ方が無難です。


無地の袴が一枚あると、紬にもお召にも合わせられますから重宝します。色は手持ちの複数の着物と合う色で。



■ ズボン状の袴


日常生活において、活動的な和服生活をするためには、野袴をはじめとする裾が細く仕立ててあるズボンのような形状の袴がお勧めです。わかりやすく言うと、水戸黄門のスタイルです。この手の袴には他にも、軽衫(かるさん)袴、庄屋袴、裁付(たっつけ)袴などがあります。野袴は袴のひだもそのまま残して裾細にしたもので、最も袴の風格が残るものですが、軽衫袴や庄屋袴は構造上はれっきとした袴ですが、見た目は作務衣の下衣に似ていて袴のひだもそれほど強く残してありません。

軽衫袴は、その昔日本に渡来したポルトガル人が着用していたピエロが穿くようなズボンを真似て袴にしたもので、軽衫という字もポルトガル語の当て字です。庄屋袴も形状はほとんど軽衫袴と同じですが、こちらは普通の袴を動きやすいよう改良したものです。裁付袴は、膝から下の部分に脚絆(きゃはん)を縫い付けてあるような形のもので、今は相撲の呼び出しの人が穿いているくらいですが、時代劇ではよく見かけますよね。

下の二枚の写真は日常着として最適な軽衫風の野袴と、武道袴です。野袴の方は、夏用の麻100%のものです。武道袴の方は正式には何用かわかりませんが、これは普通の馬乗り袴に比べ、裾を細く仕立ててあるのでズボンの感覚に近い袴です。木綿100%なので丸洗いも効きますが、袴のひだがすぐによれよれになってしまうのが難点です。いずれにせよ、こうした家庭でも洗濯できる袴があると、日常気軽に活用できて便利です。

軽衫に近い野袴 藍木綿の武道袴




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